専門科目3回目です。
旅に出ようかしら・・・
今回は引き続き社会学の論理構築や分析方法について説明します。
1科学の方法3類型
社会科学の究極の目的は、人間社会に妥当する必然性の命題を法則とすることです。
その科学的な方法として3つの型が定式化されています。
・統計帰納法
「リアリティを帰納法によって検証可能な存在(経験)に接続する手続き」
例 都道府県の自殺率、離婚率→各県の特性
・数理演繹法
「時間・空間を超越した『普遍』で『抽象』な仮説認識としてのリアリティを、演繹という方法手続きによって反証可能な(存在)へと接続する方法」
こんな感じでしょうか・・。
自然現象とは違って社会現象には人間の意味によって構成される部分があります。ですから、上記に加えて意味解釈が重要になります。
「『特殊』で『個別』なリアリティの意味認識を、解釈法によって了解可能(経験)に接続する方法」
例えば、
ある行為が神聖なものとして賞賛され、
宗教儀式が発生するのはなぜか?
という問いに対して、
人々の動機や集団の特性から説明しようとすることが意味解釈になります。
社会科学における法則性
このように、自然現象における法則の発見に比べて、社会現象の発見は、人間の行為や活動を対象とするので発見には大きな困難が伴います。
この社会学の法則性については、
以上の3つがあります。
自然科学においては①+②に限定されますが、社会科学では③も加えて幅広くとらえようとしています。
2.概念構成と命題構成
次に、社会科学における理論構築には概念構成と命題構成があります。
概念構成
対象を的確に捉えた概念を作り出すこと
命題構成
概念間の関連もしくは要因間の関連
まず、概念構成が重要である理由は2つあります。
①社会現象を一義的に確立するのは困難
例 「家族」といった時に血縁関係のない者は家族構成とみなされる?ペットはどう?
そうです、定義が難しいのです。
②新しい社会現象を的確にとらえるため
例 ジェンダー、エスニシティなど
次に、命題構成の例としては、
・デュルケム『自殺論』における命題
「社会の凝集性が低い時には自殺率が増大する」
社会科学の理論構築では、概念構成と命題構成が重要な作業であるといえます。しかし、研究者が新しい命題を提出するのは至難の技です。一定の方針のもとに概念を相互に結びつけ、再構築することが次の作業となろます。
3.理論研究と実証研究
人文・社会学における理論体系では、その理論が生み出された時代背景や社会背景に研究対象を広げます。
何故なら、人文・社会学の理論の多くが時代相関的もしくは社会相関的な理論だからです。
例えば・・
合理的選択理論のスタートというべき「囚人のディレンマ」は、利得計算からナッシュ均衡へと至る理論を考察し社会的ディレンマが発生するメカニズムを研究しています。
ところが、人間は自らの即時的な欲求充足を回避し、利他的な行為やボランティア行為という「非合理的」に見える行為を行います。
社会学における理論を検証し、理論の経験的妥当性を問うこと
検証の際には、実験を行うことは社会学の場合不可能なので、以下の方法で調査します。
①調査票
②聴き取り
③参与観察
現場に行き私生活を体験し記述
④ドキュメント分析
手紙・日記・新聞・雑誌などの文書記録
⑤既存統計資料の分析
理論研究と実証研究は、独立した作業であっても分離はされていません。往復運動のようになされるべきであるといえます。
4.内在的批判と外在的批判
内在的批判と外在的批判は、理論を吟味するための2つの方法です。その前提として3つ理論を押さえましょう。
①領域仮説と大前提
概念構成および命題構成からなる純粋理論の根底にあり研究の指針となるもの
②概念構成と命題構成からなる純粋理論
例 社会的交換理論における等価交換の原理など
③規範理論
当為・・なすべきに該当、ある社会現象に政策判断や価値判断を下すこと
内在的批判は②に焦点を当てます。
これに対して外在的批判は①+③に焦点を当てます。
社会学の理論は、純粋理論のみで展開するのであれば、内在的批判のみで充分なのですが、時代の推移により社会は変化し、他分野の学問の発展に伴い前提や規範も変化せざるを得ないのです。外在的批判を取り入れることで新しい社会学理論を脱構築する契機して位置付けましょう。