慶應義塾大学通信教育過程の記録

文学部1類(哲学)を2020年3月に卒業!同大学社会学研究科博士課程合格を目指します。

【その他】ペッパーくんの演説で感じたこと

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行きたい・・


慶應通信や勉強に関する話題ではなくペッパーくんの塾生代表選応援演説を通じて感じた個人的な長い話です。


先日、ある仕事を終えて1ヶ月半振りに区切りがついた。こういう時はとりあえずビールかな。井川遥がいるハイボールのお店は何処だろう。でも、私はお酒が飲めない。レッドブルー片手に月夜の下をあてもなく歩いた。やっと終わった・・開放感に酔っていた。


1ヶ月半の記憶があまりない。
自分の実力以上の仕事に加えて、卒論やEスクのレポートや小テスト、運動会もあった。競技の合間に蒸し暑いテントでこっそり作業していたら意識が朦朧としてやばい感じになった。


成果物は相手の納得いくものには程遠く難航した。
何時間かけたとかそういう話ではなく、相手が望む結果が出せないのだ。あと数年待って下さい、勉強してきますとかいう訳にもいかない。
今自分にあるもので勝負するしかない。


そうなんだけど・・・眠い・・。


疲弊し切っていた。そんな時だった。
ペッパー君に出会ったのは。


図書館でEスクのレポートや卒論のために借りた本を返した。15冊あった。

そもそも、こんなに読む必要あったのか・・・。

喉が乾いた。

ふらふらと自販機の方に歩いた。


その時だった。
いきなり、ペッパーくんが視界に飛び込んできた。


「彼の良いところは体力があるところ、頭がキレるところ、そして、慶應大学への愛が半端ないところです。これ以上の候補者は慶應大学を探してもいないと思います。おい!ここまで褒めてやったんだからちゃんと当選した後に慶應大学にもペッパーを導入しろよ」


あははは!!ペッパーくん!なんでいるの?!
しかも、斬新。センスあるなぁ!!


気がつくと声を出して笑っていた。
こんなに笑うのは久しぶりだ。


笑っているうちに、悲壮感が一気に抜けた。


そして、周囲を見渡した。


自分が何処にいるか忘れていた。


ああ、ここは大学だった。日吉だ。


現役で2年生ならば2000年生まれなのかな。
私が大学生だった頃に彼らは生まれたのか。


大学生・・・。


「君の志望理由は論旨が通ってる。前の大学の学部との関連性もあって凄くいいと思う。ただ、これって、君が本当にやりたいことなのかな?全然違うんじゃないの?間違っててもいい。支離滅裂でもいい。君の言葉で君の想いを僕に話してくれないかな」



どうして見破られたんだろう。
それとも、圧迫面接を義務化しているのか・・?



英語も小論文も自分では会心の出来だというのに。
なんてこった・・・。



私は舐めていたのかもしれない。
そうだ、真意は全然違う。
志望理由は論理的に破綻していなければ内容はそこまで見ないと思っていた。




本当の想いを語る?やりたいことを言う?
気がつくと、少年アシベのスガオくんのように、無言で涙をどばどばと流し続けていた。




涙はそこからやってくる。
心のずーと奥の方。
情熱の真っ赤な薔薇・・・。




どうする?話せるのか?言葉になるか?
えい!見切り発車だ!




「・・・・子供達の、未来が・・情報技術の・・自分は・・・」




だめだ。無理だ。




幼稚園の頃から大切に育ててきた想いが込み上げる。
ここには、この学部には、そのヒントがある気がした。今後数十年に渡る情報技術の劇的な進歩が叶えてくれるんじゃないか。微かな希望を細い糸を手繰り寄せてここまできた。



でも、それは、言葉にしようとすると学術的な裏付けも何もなく陳腐で独りよがりで拙かった。



「ごめん!ごめん!泣かすつもりはないんだよ」



面接官は3人。優しそうな責任者の先生は、他の2人の先生の、あーあ。泣かしちゃったよーという冷たい視線を浴びていた。


泣くのは卑怯だ。悪いのは自分だ。


一礼してドアを閉めた。


これは落ちたな。


あんなに英語やったのに。馬鹿だな。


いい先生だったなぁ。専門は何だろう。
授業受けたかったなぁ。悔しさが込み上げる。



でも、何故か清々しい気持ちだった。


20歳と1ヶ月。
梅雨晴れの空はどこまでも澄み切っていた。


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すぐに気持ちを切り替えて他大の試験準備を始めた。
程なく合格通知が届いた。


後で分かったことだが、その先生は「経済刑法」「情報法」が専門だった。「コンピュータ犯罪」の授業は本当に面白かった。


昨年「近時のコンピュータ犯罪改正法について」を演題に、コンピュータウイルス、サイバーポルノ等にまつわる過去の事件・事故、またそれらを取り締まる政策、法律の改正法について最終講義をされたそうだ。


偽りの志望理由など見破られて当然だ。または、全員に同じことをして反応をみていただけかもしれない。今となっては真相は分からない。


しかし、その先生の面接が効いたのだと思う。

明確な目的意識を持って入学したこともあり、志を同じくする友人達に恵まれた。橋梁の解析や設計などの土木関係、自然言語処理の解析を用いたシステム開発、ゲームの創作、分野は違うけど、皆、寝る前も惜しんで勉学に没頭していた。


スマホはまだない。携帯すら持ってない子が少数だがいた。McIntoshは1分の映像編集ですら頻繁にフリーズしていた。授業は主にUNIXで行われた。


明日を未来を少しでも良い方に傾けたい。皆が静かな闘志を燃やしていた。


私はそんな友人達を心から尊敬していた。
自分には全く理解出来ないプログラムをあっという間に書き上げる。データが次々と処理されていく。その文字列はいつも圧倒的に美しくて息を呑んだ。
感動していると、この程度でやめてよと笑われた。
産学連携による起業を手伝ったり仲間が作ったゲームを売りにコミケにも行った。


自分が単独でやってたことは恥ずかしいから省略。




そんな大学生だった日々が走馬灯のように駆け巡った。
スガオくんのように涙がどばどばと流れた。



「おい、何泣いてるんだ?お前だけ何も形にしてないけど十年以上もサボっていたのか?」




ペッパー君の声がした。



「キツいこと言うなあ。
でも、結果見るとそう言われても仕方ないなあ」



「あのさ、ペッパーくん。自分を重要視する度合いが低ければ低いほど、人生の質は向上するって説があるの知ってる?形とか誰がやったとかそんなの別にどうでもいい。でも、諦めたわけじゃない。」



「その日その日を人生最高傑作の日にしようってジョン・ウッデンは言ってる。そんな感じで積み重ねることでしかないと思ってる」



「なるほど。言い訳はそれだけですか?あなたも歳をとったという訳ですね。それなら尚更、目の前の責任を果たすべきです」




「確かに。仰る通りです」



その時、Progress−ap bank fes09スガシカオwith Bank Band Live がイヤフォンから流れてきた。



「例えば、僕らなんかだとアルバム、受験生だと受験っていう大きい目標があって。いきなりそれに向かって何でもすぐダッシュしたら届くってもんじゃなくて。パンフレットの表紙にあと一歩って書いてあったけど、一歩づつ前進すれば絶対ゴールより遠くにはならなくて少しづつ近づいていくんじゃないかな。なんかそんなメッセージを伝えたくて作りました。聴いてください。Progress」




涙は乾いていた。疲れも飛んでいた。



あの日、ペッパーくんに出会えて良かった。
君は世界初の感情認識パーソナルロボットなんだね。


大切なことを思い出したよ。ありがとう。


投票権はないけど大学に導入されて何処かで会えるように祈ってるね。




【ペッパーくん】
ペッパーくんは感情認識ヒューマノイドロボットでソフトバンクロボティクスが販売などの事業展開を手掛けており、ヒト型ロボットとして店舗などへの導入が進んでいます。「感情エンジン」と「クラウドAI」を搭載した世界初の感情認識パーソナルロボットで世界で初めて量産されたヒト型ロボットです。2014年に発売されました。本体価格は一括払い213,840円(税込)、分割払いは6,320円36回払いで227,520円です。
(Wikipediaより)